初演 1905年12月30日、アン・デア・ウィーン劇場(ウィーン)

設定 1900年頃、パリ

登場人物 ハンナ・グラヴァリ…富豪の未亡人(S)
ミルコ・ツェータ男爵…行使(Br)
ヴァランシェンヌ…ミルコ・ツェータ男爵夫人(S)
ダニロ・ダニロヴィッチ伯爵…行使館書記官(T)
カミーユ・ド・ロション…パリの伊達男(T)
他いっぱい

ものがたり
第1幕 パリの公使館
ポンテヴェドロ(ある架空の小国)のフランス公使館で君主の誕生パーティーが催されている。フランス行使ツェータ男爵夫人のヴァランシェンヌは、パリの伊達男カミーユと現れる。人々がサロンに集まり始めた頃、大富豪の未亡人ハンナ・グラヴァリが到着する。ツェータ男爵は、もし彼女がパリの男性と結婚してしまえば、莫大な遺産が、全て外国に流出して国庫が破綻してしまう、と心配している。男たちは次々とハンナのご機嫌を取り持つが、ハンナはそれが財産目当てだということを知っている。
ツェータ男爵は、ハンナのかつての恋人ダニロ・ダニロヴィッチ伯爵を呼ぶ。以前、平民のハンナは、貴族であるダニロと身分が釣り合わず結婚できなかったのだ。お気に入りのマキシムで徹夜で酒を軟んでいたダニロは、邸に来て祖国が何だと歌いだし、(おお、祖国よ)その上疲れたと言ってソファで眠ってしまう。
そこにハンナが通りかかり、ダニロも目を覚ます。ダニロは大金持ちになったハンナに、結婚はしない、と意地を張る。一方のハンナは、そんなことを約束などできましょうか、と皮内を言って去る。ツェータ男爵はダニロに、祖国のため、なんとか彼女と結婚してほしいと頼むが、ハンナの心を測りかねているダニロはうなずけない。
男爵夫人ヴァランシェンヌは、保身のためにカミーユをハンナに紹介する。だが、ハンナはダンスの相手にダニロを選ぶ。しかしダニロは、他の男たちにパートナー権を売ると言い出す。大騒ぎの末、結局、二人は踊り出す。

第2幕 ハンナ邸の庭
東欧にある故国の衣装をつけた人々が集まり、ハンナは故郷に戻ったつもりでと言って歌い始める。(昔、ヴィリアという森の妖精が)ツェータ男爵は、伊達男カミーユが人妻とねんごろになっていながら、ハンナとの結婚をも望んでいると聞き、心中穏やかでない。そこにダニロが到着する。ハンナが気持ちを打ち明けても、彼は最初の約束にこだわって意地を張る。ヴァランシェンヌは、カミーユの誘惑を断りきれず、ついにあずまやの中に入ってしまう。そこにツェータ男爵が来て鍵穴からのぞき、妻の姿を見て仰天する。ヴァランシェンヌは裏口から逃げ、通りかかったハンナが機転を利かせて夫人と入れ替わる。ハンナは、カミーユとともにあずまやを出て、彼を婚約者だと紹介する。仰天するツェータ男爵とダニロ。ダニロは、彼女との恋をしみじみと思い出し、マキシムヘと退散する。それを見たハンナは彼がまだ自分を愛していることを確信する。

第3幕 ハンナ邸
ハンナは邸をダニロが好きなマキシムのように飾りたてる。ハンナはダニロにあずまやでの一件について真実を伝えるが、ダニロは彼女の財産が重荷で受け入れられない。(唇は黙っていても)一方のツェータ男爵は、あずまやで妻の扇が見つかったため、即座に離婚を宣言し、ハンナに求婚する。だが、ハンナはもし彼女が結婚すれば、遺言により財産権は彼女のものではなくなると告白する。ツェータ男爵は、すぐに求婚を撤回し、変わってダニロがハンナに結婚を申し込む。遺言は、財産は再婚相手のものになるという内容だった。妻の貞淑を疑っていたツェータ男爵も、ヴァランシェンヌの本心を聞いて一安心、めでたい幕切れとなる。